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街おこし学白書

 

街おこしの要諦

 

1. 地域を愛すること

 

 街おこしの活動は、日本中のいたるところでマグマのごとく大きなエネルギーを生んでいる。1700余の地方自治体はもちろんのこと、それらの各町内会だとか行政区などでも街おこしの活動は活発だ。大成功して地域が大いに盛り上がり莫大な利益を産んでいるところもあれば、なかなか思うようにいかず消え入りそうなものもある。また、既に消えてしまった街おこし活動も無数にあるだろう。一方で、街おこしなど一切やってこなかった自治体や地域もあるに違いない。

 

 本書では、地域活性化のために有効な街おこしの実施について、何が必要であるのか、そしてどのようにすれば成功するのかを論じていく。

 

 街おこしは、地域に住む人々の心を一つにする。喜怒哀楽を共有し、みんなが地域を大好きになる。そして地域を誇りに思うようになる。また観光や物産振興に結び付ければ、地域に利益を生み出し、そこに住む人々の生活を豊かにする。ならば、それらを実現していくためにはまず最初に何が必要なのだろうか。

   まず基本的な事として地域を愛することである。街おこしをやろうとする人々みんながその地域を愛することである。そこからがスタートだ。逆から言えば、街おこしをやろうという時は、地域を愛している仲間をどれだけ集めることが出来るかが成否の大きなカギになるだろう。

   街おこしというものは少人数ではなかなか成果を上げられるものではない。デジタル社会と言えども、1人、2人で街おこしを成功させる、などという事は不可能であろう。会社を立ち上げて、例えばICTを武器に利潤追求をしていくこととは違う。

  地域を活性化させるという事は、大きな人的エネルギーが原動力になっていく。そういう意味で言えば、街おこしというものは、全くアナログの世界のものなのかもしれない。地域を愛し、この方法で街おこしをやっていくんだという考えが一致している同志をどれだけ募れるかが最初の大きな仕事になるのだ。


   では、どのようにすれば地域を愛せるようになるのだろう。

地域を愛せるようになるには、その地域でずっと生活をしていくという気持ち(覚悟)が必要である。そのうち引っ越して別の地域で生活していこうと思っている人にとって、その地域を愛し、街おこしに打ち込んでいくというのはなかなか難しい事が多いのではないかと思える。街おこしは楽しい事ばかりではない。苦難が続くということも場合によってはあるだろう。

 

皆と苦楽を共にして街おこしの活動を行っていく時に、いずれこの地域から他へ移動するだろうと考えているメンバーのモチベーションは少なからずズレが生じやすく、ほかのスタッフとの考え方の相違を生んでしまうことも多い。活動的に街おこしを行っていくのであれば、出来ればスタッフのやる気や目的意識は同じ方向を向いていてほしい。方法論で言って、モチベーションの度合いによりグループ分けをして同じ街おこしに参加していくという方法もあるが、それはモチベーションが強い中核になる組織があってこその方法論である。従って地域を愛せるようになるには、基本的にはその地域でずっと生活をしていくという気持ち(覚悟)が必要である。

 

   それらを踏まえて、みんなと地域について議論をし、活性化について語り合ってみよう。地域についてみんなでいろいろと話してみることは実に大切なことだ。地域にはその地域が持つ特徴がある。例えば美味しい食べ物、昔からの習慣、お祭り、偉人、地形、景観などいろいろなものが考えられるが、みんなで議論をしてみるとよい。そこから地域の人々に共通の認識が生まれる。そしてさらに議論は、良い点については伸ばしていこう、悪い点については改善しようという方向に発展していくだろう。

 

   そういう議論を繰り返していくうちに地域に愛着を感じるようになる。そして地域を愛するようになっていく。みんなが地域を愛するようになっていけば街おこしの第1歩目がスタートするのである。