健康改革
(1)国民の健康改革
今まで日本では健康改革という言葉は聞かれなかった。だれも健康改革という政策をとなえてこなかった。しかし、人間の健康に対する考え方は大きく変えていく必要があるのではないか。国民の健康については、医療保険に影響が及ぶ。この予算が膨大なのである。今後ますます高齢化社会が進んで行く中で、国民の健康に対する政策ということは国を維持し更に飛躍させていく事に欠かすことのできないものなのである。
まず必要なことは今までもそうであったように国民が自らの健康に対して常に注意を払うこと、そして家族の健康に注意を払う事が大切である。それら基本的な国民の行動があってこそ更なる政策が生きてくることになる。更に、1年に一度、検診を国民の義務とすること。国民皆保険を実現している日本としてはそんなに難しい事ではないだろう。国民の健康状態を国が把握することはそんなに違和感のある事ではない。ただ個人情報であるから漏れのないようにせねばならない。それらを前提として論じていくことにする。
今、人間に対する科学と医学の進歩がめざましい。その中でも遺伝子に対する研究が今後の生きる物の生命に大きな影響を与えていくであろう。具体的に説明をする。現在、日本ではDNA検査と称して遺伝子診断が成されている。民間の企業も行っているし、医療機関や研究機関でも行われている。国民が望めばDNA検査は簡単に受けられる時代になった。そのことによって医療は個人化医療の時代に入っていくと言われている。遺伝子診断とは、それぞれの人が持って生まれた性質、つまりゲノムDNAといわれる遺伝子の情報を細部にわたり調べることで、何かの病気にかかりやすい要因を見つけたり、薬のアレルギー反応を予見したりすることができる。それぞれの人に適した診断と手当てをすることによって、病気を未然に防ぎ、発病者にはその人に合った治療、投薬が出来るようになる。ただし一卵性双生児のように全く同じゲノムDNAを持っていても、その後の生活環境や習慣の違いによって人の一生は変化するようになる。従って一般的な見解として遺伝子診断の結果を捉えていくことになる。
さて、遺伝子検診により自分が将来どのような疾患にかかりやすいのかがわかれば、日頃からその疾患にかからないような行動を心がけて生活をすることが出来る。癌にかかりやすい人、心臓病にかかりやすい人、脳疾患にかかりやすい人はそれらの病気にかからないような生活を送り、そして適切な時期の検診を受けて健康を維持することも可能になるわけだ。遺伝子診断を全ての国民が受けるようになれば、国民の健康に対する傾向が把握できるようになり、いろいろな政策が実施できるようになるであろう。それらが健康改革なのだ。ただし、遺伝子の内容は極めて高度な個人情報であるので、個々の情報はきちっと管理をせねばならない。遺伝子には、遠い先祖にさかのぼっての情報も含まれるのでなおさらである。それらを踏まえての健康改革ということになるのだ。
例えば、遺伝子の情報によって個人で体に気を付けるということは当たり前のことだが、同じような疾患になりやすい人々がグループを作り共に健康を保つ行動をとるとか、専門医の方に定期的に検診を受けるとかが可能になる。また、それらの個人やグループの皆さんに行政が情報を提供し健康維持の手助けをするというようなことも容易だ。そうすることにより、なるべく罹患せずに人生を歩んでいくということになれば個人の幸せにも繋がるし、国にとっては巨大な医療費の圧縮にも繋がる。
このような事がまさに健康改革ではないだろうか。しかしながら、人はいずれ必ず死を迎える訳で、苦しまず出来る限り安らかに最後を迎えられるよう、今後の医療の発展を望むところである。
(2)医療制度の改革
医療制度の改革と言っても医療の技術に対して述べるわけではない。医療の技術においては日々進歩を重ねており医学に携わるドクターの皆さんに委ねたい。ただ、特定の疾患に対する研究や医療技術の開発については、国が予算を十分に確保し国民の健康のために国としての責任を果たしていかねばならない。従ってこの部分においては日本が誇る皆保険制度について述べていくこととする。
わが国の医療については、国民の誰もが加入している医療保険によってかかる費用の軽減がなされている。もしこの制度がなかったとするならば、誰もが安心して診療を受けられなくなるだろう。病院に行って診察してもらうのに多額の費用を支払わねばならなくなる。これらのことに対応している日本の皆保険制度というものは世界に誇っていい制度なのである。
さて、それでは国民1人あたりの医療費はどれほどの額になるのだろう。まず75歳以上の1人当たりの平均は、2017年度というちょっと古いデータであるが92万2000円と驚くほど高額である。75歳以上の国民1人1人に92万2000円かかっているということになる。ちなみに、65~74歳までの方には73万8000円、45~64歳までの方には28万2000円、15~44歳の方が12万3000円、0~14歳の皆さんが16万3000円となる。総額で43兆円を超えるのだ。日本の国家予算が100兆円ちょっとであるから、4割を超えるのである。
医療費の増大は国民に重税感をもたらしている。43兆円を超える額を国民が負担しているのである。それらは公的医療保険として大きく分けて国民健康保険税と社会保険の中の健康保険料の2つにより徴収される。なお、規模は小さくなるが船員保険、共済組合なども公的医療保険に含まれる。特にここ30年,40年の間で問題になっているのは少子高齢化がますます深刻化して高齢者の医療費が増大し、税金を納める現役世代、要するに実際に働いている人達で支えきれなくなるのではないかという危惧が現実のものとなってきているのだ。若い方々が沢山子供を産んでくれれば問題ないのであろうが、出生率は下がる一方である。子供にお金が掛かるようになった今、若いお父さん、お母さんが出産を控えてしまうのであろう。高齢者を支えなければならない若者が減る一方で、医療保険制度の行く末は不透明さを増している。それでは、皆保険制度を今後も維持をしていくにはどうしたらいいのか。
1つは子供を産み、育てやすい世の中に変えていくことであるが、今までも国は政策をいろいろと行ってきたが改善が見られず子供の数は減る一方だ。ある野党の政治家が子供が生まれたら1人につき1000万円支給するべきだと提言したが、そのくらいの事をしていかなければ改善の方向にいかないのではないかとさえ思ってしまう。
そういううことで、出生率を上げる政策は今後も常に取っていく行くべきだ。国の浮沈にかかわってくる。
出生率を上げて若者を増加させるという時間を要するプロセスよりも手っ取り早く、働く若者を増やしていくとしたら、外国人を労働者として雇い入れる事である。2019年4月1日施行の改正入国管理法により、外国人の労働者雇用に対する規制が大幅に緩和された。これにより令和2年10月時点の外国人就労者は172万人ということである。就労者については、治安維持のため試験を行って人物のチェックを行い、特定の技術を有する者に限ると規制を行っている。また、特定技能1号と2号に分けて、1号は最大5年の滞在、2号については決められた期間を更新して期限を設けないとしている。
172万人というのは増加が著しいが、私はその10倍でもいいから外国人の就労者を増やして医療保険制度に組み込んでいくべきだと思っている。試験を厳しく行い治安を乱すような人物は入国させずに若者の労働人口を増やし健康保険制度を維持していくのである。これは、後述するが年金制度についても同様である。ただ、雇い入れる会社は必ず医療保険をその就労者に掛けねばならないという法律を作らねばならない。それらを行った上での制度である。
また日本の医療制度は大変優秀であるので、発展途上の新興国に日本の医療制度に加わってもらうという方法もあるだろう。そこには若者も大勢いるにちがいない。新興国の国民、あるいは特定の大きな会社に日本の健康保険制度に加入してもらう。その代わりに先進の医療を受けることが出来るとすれば新興国にとっても利点があるのではないか。また、TPPなど経済的な国際連携が盛んに行われているが、医療制度のTPP版などもあり得るのではないか。例えば、日本の保険制度のもとに各国が一つになる。そうすれば若者が更に少なくなっていっても日本は医療について心配することがなくなる。夢物語のように感じるかもしれないが、考えてみる価値はある。発想の転換は必要である。