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The Great Reset Of Japan section4

(1)日本の「とてつもなく巨大な宝物」

日本人の莫大な貯蓄

 日本銀行の資金循環統計によると、日本国民の家計が有する金融資産残高は2020年12月の段階で1948兆円に上るという。そのうち、俗にタンス預金と呼ばれる直接所持する現金と、銀行等に預けている預金を合わせた総額は1031兆円に及ぶ。日本の国家予算は一般会計で100兆円程度であるから、日本国民はその10年分も現金で貯蓄していることになる。それ以外に、株、投資信託、保険、年金基金の総額が900兆円に達するらしい。いかにも勤勉な日本人らしい話ではあるが、実はこれは驚くべき事なのである。

 

 お金は使ってこそ、その価値が生じ、いろいろと人生を楽しむことが出来るのに、日本の国民は使い楽しむことをじっと我慢して、ただ銀行に置きっ放しにしている。このゼロ金利時代にほとんど利息も付かないのに、である。私には、この金融資産残高は日本人が手にする「とてつもなく巨大な宝物」に思えてならない。貨幣というものは血液みたいなものである。血液は生物の体の中を循環し生命を維持している。資本主義経済において貨幣が血液の役割を果たし、人々の間をまんべんなく循環して利益を配分し、人々の暮らしを守っていく。それが正常な状態であろう。

 

   しかし、何とほぼ2000兆円にも及ぶ貨幣が滞って循環しないのである。人間で言えばあちこち動脈硬化をおこし過ぎて何回も死んでいる状態ではないだろうか。しかし、日本にはまだまだ循環する貨幣が存在し、株価もかつてよりは随分と高止まりしている。まあ外国資本も大量に入っているせいもあろうが、日本は本当に驚くべき国であると思うのだ。ただ、この約2000兆円を動かす方法はないのだろうか。これを動かせば絶大なる経済対策になる。特に、日本人の年間の総消費額は300兆円と言われているが、毎年100兆円でも200兆円でも消費に回ってくれれば、経済は大きく立ち直っていくに違いない。

 

   さて、なぜ日本人はお金を使わなくなったのか。その1つの原因に財務省が予算を捻出する際に使用する国債があると思う。特に歳入の足らない部分を賄う赤字国債というものを長期間に渡って乱発し積み上げてきた結果、2021年には1200兆円を超える借金が出来てしまった。将来へのつけが1人1000万円と言われる。日本の国民はこの情報が頭にこびりついて将来に不安を感じ、その呪縛から逃れられず、何が起こってもいいようにお金だけは貯めておこう、という考えに支配されてしまった。

 

 

日本銀行が国債を買いまくっている

  安倍晋三元総理大臣が、2012年に総理大臣に返り咲きアベノミクスを提唱して、大幅な金融緩和により日本銀行は市中銀行の国債を買いまくった。今や日本銀行は500兆円をゆうに超える国債を保有するという。日本銀行は買い入れた国債について、政府に返済を迫っていない。日本銀行の資産に残したままである。国債に関する法律第9条には、国債の消滅時効のくだりがあり、国債の返済義務が元本で10年、利子で5年、それを超えたら返済の必要がなくなると規定されている。つまり、今まで財務省が出してきた国債は日本銀行が買い入れた分について時効が次々と成立していき、それに伴って政府の返済義務は次々と消滅していくのである。これだけで国民の皆さん1人につき1000万円の借金が500万円まで減っていく。

 

更に付け加えると国の借金と言われるものの中には、政府の関連する機関、例えば政策投資銀行(旧日本開発銀行)やUR都市機構(旧住都公団)等の特殊法人、また各独立行政法人に対する貸付金や出資金などが300兆円ほどあり、それらは国民に返済義務はなく各機関から回収すべきものであり、それらの分を差し引くと借金は200兆円まで減ってしまう。つまり国民の皆さん1人あたりの借金は200万円となるわけだ。まあ、1人200万円の借金は大変だと言っちゃ大変だけれど、他の先進国と比較しても大した額ではない。ここまで書いてきて何が言いたいのかというと、日本の将来に不安はないですよ、という事を声を大にして言いたいのだ。

 

 

政府は「日本は将来も大丈夫ですよ」と説明をすべき。

  まず政府、この場合は財務省だが、国民に「日本は将来も大丈夫ですよ」と懇切丁寧に説明をすべきである。不安を抱えてきた国民の皆さんから不安を払拭して、将来に夢を持つことが出来るように説明をすべきである。そこが第一歩ではないのか。今まで貯めてきたお金を楽しみのために使おう、という発想の転換が最初に必要なのである。

 続いて大切なことは、国民の皆さんが将来に渡って本当に大丈夫だということを実感できる政策を打ち出していく事である。老後を迎えても国に守ってもらえるという制度を作ることが大切である。十分な年金制度の構築については別のsectionで述べるので年金とは別の角度で述べていく事とする。

 

 

ライフポイント制度(仮称)はどうだろう!

  提案するのはライフポイント制度(仮称)である。ただこの制度については前提が必要になる。まず、全ての国民の皆さんがマイナンバーを持つこと。そしてキャシュレス決済や各商店、商業施設、販売会社など、国民の消費が発生する全ての箇所のレジスターをオンライン化すること。また、それらの支払い形態から漏れてしまった物については申告すればデータに加算されること。どういう事かというと、国民の皆さんのマイナンバーに口座を設けて、各レジスターから上がってくる個人の消費額が口座に加算される。それと共にライフポイントを計算してこちらも口座に加算していく。これらが実現すれば、ライフポイント制度として夢のような政策が出来るに違いない。

 

 何をしたいのかというと、簡単に言えば国民の皆さんの全ての消費にポイントを与えて、貯めたポイントを有効に利用してもらうという事であり、消費を喚起し滞っている現金を市場に循環させようという事である。もちろん各個人のデータは厳重に管理をせねばならないし、流出など決して生じないシステムが必要であろう。また、各商店や商業施設、販売会社のすべてのレジスターをオンライン化することも大変な作業であろう。ただ、出来ないことではない。全ての国民の皆さんの消費にポイントを与えて、貯蓄から消費を引き出すのである。わずかな金利の付く銀行の口座から、ポイントの付く消費にお金を移動させて循環させるのである。

 

 だいたい先にも述べたように、日本の国内では年間300兆円ほどの消費額があるようである。ここ2年間は新型コロナの影響により280兆円まで減っているようだが、まあ300兆円の消費があると仮定して、例えばライフポイントの付与は消費額の5%くらいではどうだろう。つまり、1000円の買い物をすれば50円分のポイントが付くわけである。例えば、生涯に2億円を消費する人には1000万円のライフポイントが付くわけだ。

 

 さて、5%のポイントが与えられるのであれば皆さんは銀行に預けているお金を引き出して消費に回したくなるだろうか。とにかく制度設計の中で何%が適切なのか判断が必要である。ただ、300兆円の5%は15兆円になるわけだが、これは国が消費税の中から捻出すべきである。令和元年度の数字であるが、消費税の総額は42.2兆円である。そのうちの30.3兆円が国庫に入る。30.3兆円の中で年金に12.7兆円、医療に11.9兆円、介護に3.2兆円、子供・子育て支援に2.6兆円が使われている。国民の皆さんが年間150兆円を預金からおろしてなにがしかを消費してくれれば消費税が15兆円増加してライフポイントに充てることができるのである。私は財源についても十分に可能であろうと考えている。

 

 さて、ライフポイントで何が買えるのかも決めておかねばならない。本当は将来の不安を取り除くということで論じれば、老後の生活費や医療、介護にのみ使えれば目的に合うのだけれど、それでは消費を喚起する魅力に欠けるだろう。一定の基準を設けた中で、なんでも買えるというのが一番簡単でいいのかもしれない。まあ、いずれにしても制度設計は国策として国会議員の皆さんや各省庁が十分な検討を加えて、日本の「とてつもなく巨大な宝物」である国民の莫大な貯蓄を循環させ、日本のGreat Resetのために活用してほしいものである。また、消費を喚起させるのに有効な政策がほかにあるのかどうか、官民あわせた関係機関で真剣に検討していただくようにと願う次第である。

 

 なお付け加えておくが、消費を喚起する場合に、魅力的な商品の開発が伴えば更に消費を誘導できるだろう。かつて1950年代に三種の神器と言われた白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫などがそうであるように、今後びっくりするような商品の開発を望むものである。