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The Great Reset Of JAPAN (section3) 第2次所得倍増計画の実施

第2次所得倍増計画の実施

 所得倍増計画というと池田隼人内閣のもと、昭和30年代後半の経済発展を支えた政策である。所得倍増を合言葉に昭和39年開催の東京オリンピックに向けて日本国中が沸き立っていた時期である。

 さてそれと同じ計画を実施してみようということであるが、当時の低い所得を倍増させることはそれなりに実現は可能であったろう。現在の所得はというと、1990年代から続く暗黒の30年の影響で国民の所得はずっと停滞したままで新興国にも抜かれてしまうありさまではあるが、かと言ってその額を倍増させることは至難のことであろう。昭和30年代と状況は大きく違っているのだが、しかし目標は高く掲げて達成に向けて国民が頑張って行くということに意味があるのではないか。従って、敢えて第2次所得倍増計画と銘打って実践に入って行くべきである。

(1)産業構造の転換

 書くのは簡単だが、実際に行っていくことは大変なことだろう。池田内閣時代の所得倍増計画では石油、鉄鋼を中心とした重化学工業への転換が図られた。日本はそれによって技術大国としてGDP世界第2位まで駆け上っていく。あまりに急激な発展を遂げ、世界から奇跡の復興と言われた。そしてそれらの影の部分として公害というマイナスの荷を背負ってしまった事も記憶をしておくべきであろう。

 第1次所得倍増計画は重化学工業への転換であったが、第2次においてはデジタル革命によるICT産業やAIとロボットを組み合わせたトータルコーディネートをはかるメソッドについてがポイントになるであろう。つまり日本国内の全ての産業の生産性を劇的に向上させる経営環境の革命を国と民間双方の提携によってトータルに取り組んでいく。国は工業から始まって商業、サービス業、観光業、農業、漁業、林業にわたるまで分野別にICT産業やAI-ロボットの導入方法を研究し、それらの研究成果を各分野の生産現場に配備していく。これらについては国が主導し国費投入の上、民間の各産業に浸透を図る。

 このような政策により世界でトップの技術を目指して取り組むことが肝要である。2030年に向けて6Gにおいても世界の先陣を切らねばならぬことも付け加える。かつて1Gのトップを切った時のように。

(2)社会資本の再構築

 社会資本の再構築は今後の日本にとって本当に大切なことであり、最近とみに続発している自然災害に対する対応と共に日本の命運を分けるものである。まず、ライフラインについて説明していくが、水、電気、ガス、下水道などの基本的な社会資本は整備されて久しいが、地区によっては老朽化が甚だしく再整備が急務である。これらについては人の命にも直接かかわる事であるから行政も民間も対応は義務である。

 それはそれとして、社会資本の再構築として真っ先に述べておきたいのは交通体系の再構築である。第1次所得倍増計画において交通体系の柱は新幹線の開発と高速道路の整備であった。それによって国民の移動に革命が起き、物流の根本的な考え方が変わった。ビジネスで例えば東京、大阪を移動する時に日帰りでの移動を可能にした。その後、新幹線が全国を網羅するに至って人々の移動に対する機会は格段に上昇し、日本の経済を大きく変えていった。また高速道路の整備は物流の手段を大きく変えた。かつては鉄道が物流の基本にあって鉄道網が物を運ぶ道筋であったが、高速道路が全国的に整備されることによって自動車が物流の主役となり、トラックやローリーなど大型の輸送車が全国に物を運んだ。これらのことは日本の経済を大きくしていった。

さて第2次所得倍増計画においては更にパワーアップした高速交通体系が必要である。まずリニアモーターカーの登場である。リニアモーターカーは空気浮上式と磁気浮上式の二種類があり、日本では磁気浮上式を用いて開発中だ。現在2027年を目途に首都圏(品川駅)-中京圏(名古屋駅)間を結ぶ中央新幹線の営業開始運転を目指している。リニアモーターカーによると品川から名古屋まで40分、もし大阪まで開通すれば64分というから極論すれば通勤圏である。この効果は東京から大阪まで人口6500万人規模という世界に類例を見ない巨大都市圏の誕生を実現させるという。フランス、ロシア、韓国のGDPを上回るマーケットを有するという。リニアモーターカーは日本の要所を結ぶべきである。北海道の札幌から九州の博多まで日本の背骨を走る。要所の駅から従来の新幹線が更に人を運ぶ。経済をさらにステップアップさせるためには必須だ。

   そして高速道路の更なる整備が必要である。まだ高速道路の恩恵を受けていない地域は沢山あるから、そこに整備が必要だ。さらに私は、地域高規格道路と言われる道路網の整備がぜひとも必要だと考える。地域高規格道路は車専用道であり、そのほとんどは高架道路である。高速道路を整備するには目的地間の距離が短い幹線の場合、また費用対効果を考えた時に高速道路の整備までは効果がが見込めない場合などについては地域高規格道路で対応し、地域間の車による移動の利便性を追求すべきである。現在ある国道、県道、市町村道の中で縦横の必要な道路を再整備するべきである。全ての道路をそうせよというのではない。幹線道路の中で費用対効果や利便性を考慮した場合に必要な道路について地域高規格道路に整備するべきだ、ということである。

  さて都市部においてであるが交通体系の見直し、整理が必要であろう。鉄道在来線の煩雑さと道路とのアクセスの悪さは何とかせねばならない事だ。国民に甚だ不便な生活を強要している。特に踏切問題は早急に改善すべき内容であろう。事故を招き人命を損なう危険があちらこちらに散在している。行政と公共交通を担う民間企業に大きな責任が存在しているのは否定できない事実である。予算が膨大だ、などと言ってはおられない。特に行政については国民の生命を守ることが最大の責務なのだから。

  日本全国の高速道路を含めた道路についても整備されて久しい物については改修、あるいは再整備が必要である。特に古くなった橋梁やトンネル、急峻及び狭隘な道路については全国に無数に存在するので、これらについては改修、再整備を最優先課題で取り組むべきである。また高速道路についても整備されて半世紀以上経過するものも沢山存在し品質について早急に調査をし改修、あるいは再整備を行っていかねばならない。いままで述べてきた以外についても社会資本の再構築が必要な物が沢山あると思う。それらについては国の責任において再構築を断行せねばならない。

以上、社会資本の再構築を行っていくことは膨大な作業を生み、経済を回し資本もめまぐるしく回転するであろう。そしてそれらは国力を飛躍的に伸ばすであろう。

(3)空路整備と物流改革

    昭和30年代から始まった高速交通体系の構築により経済力は飛躍的に上昇し国民の生活は目を見張るほど豊かになっていった。新幹線を始めとした鉄道網の充実と、高速道路を始めとした道路網の整備は人の移動に革命をもたらし、物流にも大きな変化をもたらした。今から半世紀も前のことである。

    現在、交通手段の技術開発は空に移ってきている。各国の自動車メーカーでは空を飛ぶ自動車の開発にちまなこになっている。さらにドローンの登場で低コストを目指した航空戦略が今後の交通革命を起こしていくのではないかと期待をさせる。ドローンで人を運び物を運ぶ。そういう世の中がすぐそこに来ている。空を使った交通と物流の革命が目前に迫っているのだ。ただ、空は障害物がないだけに移動するのに甚だ便利であるが、危険も伴う。事故により空から落下をすれば人命は致命的であり、地上の生活にも大きな危険を与えてしまう。空を利用するにはその安全性の担保がまず最優先の課題となる。飛行自動車やドローンの実用化を図っていくには空路の整備が出来てからでないと不可能であろう。

   もし仮に事故を招いても被害を最小に留める方法を確立しないと実用化は無理である。それらを実現すれば、まさに交通手段の大革命であろう。人は飛行自動車やドローンで短時間にどこにも行けるようになるわけだ。人の交通手段ということでいえば街角に空の駅を作り、そこに飛行バスが到着して次の駅まで運行する。物流で言えば街角に物流拠点を作り、そこに物を陸路で運んでおけばドローンのトラックが各地へそれらを運ぶ。安全な空路が担保されればもう目前の技術である。さて、空路が出来るかどうかだ。

(4)農業改革 (遊休農地、耕作放棄地の管理改革)

  大企業をはじめとした民間資本の導入が鍵!

 農業については事細かな政策ではなく、民間資本の導入等によるマクロの政策により論じていこうと思う。今後の日本の農業のあり方については行政も民間も大局的な視野に立って新たな制度を創出していく位の覚悟が必要となるであろう。それこそ終戦後に農地解放を断行した、それに匹敵するような改革が必要であろう。戦後の農地解放はGHQ主導のもと、資本が集中しすぎていた各業界や各階層の是正の一環として行われた。経済界においては財閥の解体、農業界においては明治以来、資本の集中により一部の豪農に土地が集中してきた当時の状況の是正を強権的に行ったのである。これにより、それまでは水のみ百姓といわれた貧しい農民が土地持ちの農家として営農し、貧富の差が縮小していった。

 現在、日本は食料自給率が低迷を続けている。食料自給率については、カロリーベースと生産額ベースの二つ考え方があるのだが、ここでは実際に日本の国民が摂取するカロリーに基本をおいて状況を把握すべきと考える。カロリーベースの考え方でいくと日本の食料自給率はちょっと古い数字ではあるが2017年では38%である。年ごとに減少をしているので現在はもっと低くなっているであろう。これら食料自給率の向上を如何にして図っていくのかということが大きな目標になっていく。それらを追求することは広大で良質な農地の維持と、農業の経営手法についての持続的な発展が必須となる。これらを実現していくには経済界の有する資本とテクノロジーを如何にして農業とマッチングさせていけるのかが大きな鍵になっていくであろう。

 農業従事者が年々減少し後継者もままならず、今後も同じことを繰り返すばかりでは将来の展望など考えられない。お先真っ暗なのだ。だからそこをどうやって変えていき、夢の持てる食料の自給が図られるのかが大きなポイントなのである。今までのつぎはぎだらけの農政を、それこそResetすることが第1歩なのだ。国民の食の維持と、農地や山林を守っていくことが国土の保全という大切な役割に繋がるということもあって、農業改革は急務である。

 さて農業と民間資本のマッチングについてである。まず農地を有効に活用するために農地の管理が必要であろう。それも行政が管理せねばならないのは遊休農地や耕作放棄地、そしていずれそのようになってしまうことが想定される農地についてである。更には所有者が貸すことを希望する農地も加わる。これらの農地については今後激増していくにちがいない。ほおっておけば食料自給率は激減するであろうし、農地は荒廃し国土の保全という点においても極めて危険である。従って管理が必要であるし、管理するからには国や県そして市町村という行政がきちんと行っていかねばならない。確かに現在においては農地中間管理機構という組織の中で各県に農地を管理する団体を設置している。これらは農業従事者間を仲介することを目的とした団体なのであるが、県によってさまざまであって予算的に見て数億から100億程度の組織であり中途半端極まりないものである。農水省が責任を持って有効活用が可能な農地の管理をせねばならない。そしてそれは農業従事者間の仲介では駄目なのである。大小の民間企業との仲介を目的にした大掛かりな団体でないと今後の農業改革に向けた基盤を作っていく組織にはなり得ないのだ。そこをしっかりと理解をして農水省や都道府県、市町村は改革を断行していかねばならない。今後は先にも述べたが民間資本をいかに導入していくかということが鍵になるわけだから、農業従事者やJAを始めとした各種農業団体や行政、そして大企業から中小企業にいたる民間企業とのコーディネートが必要になってくるのである。言うに及ばず、それらの障害になるような法律があるのであれば、先んじて法を修正しておく必要があり、速やかなる対応が必要である。

  それと共に、民間資本の導入といっても農業が儲からないと民間企業も投資はしないので利益を生む農業というものを作っていかねばならない。ICTをはじめロボットなどの開発によって生産性を向上させて、資本の投入に見合った利潤を生む体制を作って行かねばならない。繰り返すが、現在の農業を取り巻く状況は農業従事者は減少を続け、十分な後継者もいるわけではない。遊休農地や耕作放棄地は増える一方だ。そのような状況の中で食料自給率を上げ、農地や林地を維持し国土の保全を図っていくにはやはり民間資本の導入により農業を経営していくほかはないと思う。

 これらによる農業の改革が必要なのである。

(5)全国観光地化改革

 1970年代の後半に大分県知事となった平松守彦という人がいた。1979年から2003年まで6期24年にわたり知事を務めた。もとは通産官僚でコンピューターの黎明期にIBMに対抗する日本のコンピューター産業育成のため尽力した人である。後に大分県副知事になった縁で知事を嘱望され、歴史に残る名知事になった。彼は一村一品運動を提唱し村おこしの先駆けとなった。村おこしについては、バブル期と時を同じくして全国に巨大な波を作った。そして竹下内閣での全国一律1憶円をひも付き無しで市町村に支給したふるさと創生補助金の実施により大きなムーブメントを生んだ。平松知事が存在しなかったら、地域おこしの盛り上がりはなかったのかもしれない。

 さて時は流れ、地域おこしの魂は全国に脈々と生きづいている。地域おこしが大成功を治めている地区もあれば、失敗の連続で意気消沈をしている地区もあるだろう。また地域おこしなど全く無関係な地区もあるかもしれない。しかし、平松知事の精神が日本全国に浸透しているということは否定しえないところであろう。

 ただ私は一村一品運動だけでは足りないと思うようになった。現在は新型コロナの蔓延によって外出が規制され、国民はもとより海外からの観光客も足止めされて人流が途絶えてしまった。しかしいずれ感染も克服されるであろう。人の流れは再び復活を遂げ、これまで以上の観光客が全国を潤す時がくる。私は提唱する。全国観光地化改革を推進していくべきだと思う。一村一品運動の精神を一歩進めて、物産のみではなく地区各々のいろいろな特色を探し出して分かりやすく構築し、全国を観光地化していく。特色はその地の歴史であったり、人であったり、地形であったり、自然であったり、生き物であったり食べ物であったり、そして一村一品でいう物産であったり、何でもいいのである。全国のあらゆる地区、自治体で地元の観光資源を掘り起こし人々が行ってみたいと思うようなエリアを作っていく。観光資源の大小はあるだろうが、取り敢えず一生懸命掘り起こしをやってみて行ってみたいエリアを作っていくのである。そこからいろいろな考えが浮かび次の展開に繋がっていくのだ。何かをやってみないと前へは進んで行かないのだ。

 全国観光地化改革とは、それら全国の都道府県や市区町村の行ってみたいエリアをまとめて情報を世界に発信して行くのである。そうすることにより各地で観光客の誘客に努力をすることになり、ひいてはその地区の人々が自分の住む地区に誇りを持ち、その地区を愛するようになるだろう。そのことが地域おこしなのだ。全国観光地化改革とは地域おこしそのものなのである。

 ちょっと具体的に触れておくが、まず国が各都道府県や市区町村に調査費として予算を配分して観光資源の掘り起こしを促す。ここの部分については既に地域おこしが成功し観光客を誘客することに成功している地区については必要ない。次の段階としてその観光資源を分かりやすく情報発信できるようにまとめる事が必要である。これらについても国が予算を投ずるべきである。小さな自治体は予算の配慮がないと前に進めないことが多い。

 例えば情報発信のためのキャッチコピーなど作製するのに民間企業に委託するだけでもそれなりの予算を要するのだ。それなりのクオリティーを持って情報発信せねばならないのである。

 各地区の情報が集積出来れば、それらを一括してまとめ上げ発信すればいいのだ。これらをネットに乗せれば、どこで何をやっているのか一目瞭然である。そして日本全国で何を売りに活動しているのか瞬時にわかる。また、あることについて全国のどこが地域おこしを行っているのかもすぐにわかるのである。

 現在、日本では外国からの観光客を2030年に6000万人にしようと目標を設定しているが、それにはもっと国が政策を進めていくことが必要であろう。