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「社会革新」の契機に

安倍総理は三月三十一日の政府の経済財政諮問会議で「ピンチを社会変革の契機にする覚悟で取り組む」と述べ「社会革新」という言葉を使い始めました。四月七日に緊急事態を宣言したときには「最も重要なことは何よりも国民の皆様の行動変容だ」とも訴えました。こうした発信からは、総理が現在と未来に向け最終的な政策、国のあり方を決めていく段階に入ったなという印象を受けます。

 例えば、2015年の中東呼吸器症候群(MERS)でも感染を防ぐため、人と人との距離をとれということで、中国の電子商取引(EC)最大手アリババは急速に大きくなりました。決済方法を大きく変えたという意味でMERSは社会を変革したのです。逆説的ですが、生き方や価値観の見直しも起きてきます。こういうときには新しいテクノロジー、新しいビジネスモデルが生まれます。それを積極的に後押しするような、変革の社会経済戦略を考えなければならないわけです。

 政府はすでに新型コロナウィルス終息後についても考えています。すでに複数の政策を手掛けています。線路にたとえれば、複数の路線を走らせるなかで一番の太い路線は命とそれに付随する生活・事業者支援です。もう一本は同時並行で終息後にも効果のある政策を打つことです。つまり、「社会革新」の「シーズ(seeds)」です。シーズは種で、芽をつけることです。「ニーズ(needs=必要性)」ばかりを見ていると現状維持のままになってしまいます。その「シーズ」をいま見ているのが安倍内閣です。

 遠隔教育ができるように小中学生約一千万人全員にパソコン・タブレットを一挙に配布することになりました。これはスピードですね。いまだけでなく、家で勉強するのは夏休みもあれば、台風などの災害の時にも活用できるのです。未来を担う人材育成方法の大きな変革ですよ。


 対面診療でないとだめだった医療も感染を防ぐために、今回すでに初診からオンラインでできるようになりました。もちろん、対面でないとわからないものもありますが、医療に始まり福祉・介護分野まで広がる大きな変革が生まれる予感がします。

 薬も変わります。風邪薬とか目薬は毎日使うから売れる。感染症の薬は、日常的に売れず儲からないからどこも研究開発したがらない。そこで緊急経済対策で、ワクチン、治療薬の開発促進などに二百七十五億円つけています。 

 国立研究開発法人「日本医療研究開発機構」(AMED)という組織があります。2015年から安倍内閣によって「先駆け審査指定制度」を導入し、創薬開発のスピードを速めました。いまさらに素早い治験支援や条件つきでの審査・承認を必要としています。コロナウィルスの診断、治療、予防に関する研究開発で、既存薬を含めワクチン開発を手掛ける企業・研究機関などを広く緊急公募し、強力にスピードアップします。 

コロナウィルスの治療薬として期待される抗インフルエンザ薬「アビガン」の増産も国が支援し、買い上げします。総理は「アビガン」を希望する国に無償供与し、途上国支援を拡大すると表明しました。このコロナの予防薬と治療薬の迅速な開発と実用化が根本的な解決手段となります。みんなが待っています。それには国際社会が知見と技術とエビデンス(科学的根拠)を共有し、連携しなければなりません。